会長挨拶

このたび、日本生物物理学会の会長を拝命しました。掲げるビジョンはズバリ「生物物理楽」。科学(科楽)を“楽問”する——つまり、楽しみながら、とことん問い続ける学問です。

生命って、まだまだ謎だらけです。でも、だからこそ面白い。生物物理学は、物理・化学・生物・情報・工学、あらゆる垣根を飛び越えて、いろんな視点を武器に生命現象の謎に挑む、いわば“知的総力戦”の場です。私自身、蛍光タンパク質や生物発光タンパク質、超広視野高解像イメージングなどを駆使して、生命の“見えない”を“見える”に変えてきました。そのワクワクを、学会全体で共有したいと考えています。

本学会は、「物理科学と生物科学の融合による生命現象の基礎理解」を目的に設立され、年1回の学術集会の開催、邦文誌『生物物理』および英文誌『Biophysics and Physicobiology』の発行を行っています。また、若手奨励賞や若手招待講演賞、学生発表賞の授与、海外派遣支援などを通じて、次世代研究者の育成にも力を注いでいます。

そのうえで、私の任期中に、以下の3つを重点的に推進します。

1つ目、「もっと楽しい学会」へのアップデート。 私が年会長を務めさせていただいた第57回日本生物物理学会年会(https://www2.aeplan.co.jp/bsj2019/)のスローガンは「異分野融合 × 次世代育成 × 楽しい学問」でした。あの勢いをそのまま学会全体に!分野や世代、肩書きに縛られず、誰もが気軽に議論に飛び込み、自由に議論をし、「もっともっとやってみなはれ」的な雰囲気が充満した学会を目指します。

2つ目、国際化の本気加速。 私たちの研究成果や議論が、アジアをはじめ世界中の研究者とつながり、新たなコラボレーションや発見につながる学会を目指します。さらに、AI技術をとことん使い倒す時代です。文章であれば、もはや多くの言語が瞬時に翻訳可能ですし、5年もすればリアルタイムの同時通訳も当たり前になるでしょう。英語に加え、それぞれの母国語のままで繋がれる仕組みを学会にも積極的に取り入れ、国際交流を次の次元へ進化させます。将来的には海外開催の年会や、海外会員による学会運営参画も視野に入れています。

3つ目、未来の研究者を育てる「中高・学会接続」の強化。
生命の不思議に惹かれる高校生たちに、早い段階から生物物理の最前線を体験してもらいたい。高校生の年会参加を積極的に推進し、若い世代が“楽問”に挑める場を広げます。

生物物理学は、まだまだ開拓できる、挑戦できる、そして楽しめるフィールドです。皆さんと一緒に、次の時代の生物物理学をつくっていきましょう。

ご期待ください!

2025年6月21日
永井健治
一般社団法人日本生物物理学会 会長
大阪大学産業科学研究所 教授


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