(私は)つくっているのか
古賀 信康

David Baker博士のノーベル化学賞
巽 理恵,古賀 信康
2024年のノーベル化学賞は「計算によるタンパク質の設計」でデイビッド・ベイカー博士に授与された.ベイカー博士は,タンパク質の折り畳みや構造予測などの研究を通してタンパク質を理解し,ゼロから計算機で新しいタンパク質をデザインすることを目指してこられた.本稿では博士のこれまでの研究の軌跡を辿る.

広視野2光子顕微鏡の実現と脳ネットワークの機能的構造の解明
太田 桂輔,上森 寛元,村山 正宜
脳は異なる役割を担う部位が統合されたシステムであり,脳領域間の相互作用により機能が発現する.しかしながら,多領域から神経細胞の活動を計測できる顕微鏡は存在せず,広域ネットワークの機能的構造は不明であった.著者らは,広視野・高分解能・高速撮像・高感度・無収差を同時に満たす2光子励起顕微鏡「FASHIO-2PM(fast-scanning high optical invariant twophoton microscopy)」を開発した.マウス大脳皮質において全15脳領域から16,000以上の神経細胞の活動を同時計測し,(1)脳はスケールフリーネットワークではなくスモールワールドネットワークの特性を有すること,(2)長距離の機能的結合も含め100以上の細胞と協調的に活動するハブ細胞(存在確率は1%未満)を同定した.

ガラス様細胞質の普遍的べき乗則レオロジー
江端 宏之,水野 大介
本稿では,我々が開発したフィードバックマイクロレオロジーを用いた細胞質粘弾性測定手法と,ガラス状細胞質が示す普遍的なべき乗則レオロジーについて紹介する.また,代謝活動に由来する非熱的揺らぎが細胞内レオロジーを決めることを示し,アクティブガラスのレオロジーとの関連について議論する.

高密度バクテリア集団で探るアクティブマターの諸物質相と集団機能
竹内 一将,西口 大貴
非平衡性をもつ粒子の集団であるアクティブマターは,生命との関連で研究が進む一方で,新種の物質系としても魅力的だ.アクティブマターにはどのような物質相があり,どのような特性が通常物質と異なり,生命現象や生命機能とどう関係するだろうか? 高密度バクテリア集団に関する我々の研究の紹介を通して議論したい.

細胞間の接触追従によって誘起される多細胞密度波
早川 雅之,柴田 達夫
真核細胞の集団運動は,これまで強固な細胞間接着や走化性により説明されてきた.筆者らは,細胞性粘菌の走化性欠失株において,一過的な接触追随運動が細胞の高密度領域を誘導し,それが密度波として伝搬する現象を見出した.本稿では,このような一過的相互作用に起因する集団運動の性質や形成原理について紹介する.

進行波刺激に対する好中球の走化性応答
澤井 哲
炎症部位への好中球の集合は,細胞間でリレーされるLTB4への走化性によっている.進行波としてLTB4が伝播する場合,細胞の移動方向はいかに規定されるのであろうか?人工的に形成させた波刺激への走化性応答の特性について,筆者らの最近の解析結果を紹介する.

分子モーター集団による自発的秩序形成と機能創発
川又 生吹,谷 茉莉,角五 彰
化学エネルギーを機械的運動に変換して推進する分子を利用することで,超微小なアクティブマターを実現することが可能である.本節では,DNAによって相互作用をプログラムされた微小管,およびキネシン生体分子モーターから構成されるアクティブマターの系について解説し,その自発的秩序形成や機能創発について紹介する.

周期的外力下のアクティブマターと魔法角:微小管パターンの数理モデル
石原 秀至,田垣 匠海
微小管モーティリティアッセイ系に基質を通して外部から周期的な一軸伸縮を加えると,伸縮軸に対して特定の角度に沿った微小管高密度バンドパターンが現れる.この角度が現れる理由と,それをふまえた自走粒子系のモデリングによってこのパターン形成を説明する.自走粒子系ダイナミクスの新しい制御手法の可能性を探る.

Reservoir Computing for Molecular Swarms
Nathanael AUBERT-KATO
リザーバーコンピューティングは,複雑な動的システムを利用して計算する方法の一種である.特に分子プログラミングに応用でき,分子ロボットの群れの制御にも活用できる.ここでいう群れは,要素となる個体(ロボット)の集団であり,局所的な相互作用により自己組織化を行う.
オープンサイエンスが拓く科学研究の新たなパラダイム
中村 春木
キャリアデザイン談話室(34):アカデミアからはみでてみたら
篠 元輝
リレーエッセイ:シン・私が影響を受けた論文(12):タンパク質の分子認識とフォールディングをエネルギーの観点から理解する
神田 大輔
支部だより ~関西生物物理学研究会,そして関西支部~
中瀬 生彦,冨樫 祐一
若手の会だより ~物理帝国主義から生物物理へ~
上杉 佑人
海外だより ~日本,中国,そしてフランスへ~
加藤 愛理
編集後記
齋尾 智英(会誌編集委員)