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Vol. 62 No. 1(通巻359号)記事一覧

巻頭言

0.0000000003%の奇跡
須藤 雄気

解説

器官の形に種を超えた共通性をもたらす物理
郷 達明,藤原 基洋,津川 暁,藤本 仰一

器官の形には種を超えた共通性がある.この形の共通性はどのような発生機構によって実現されるのだろうか?本稿では,植物の根の形が種を超えてカテナリー曲線になるという私達の発見を例に,形を表す数式とそれを生成する物理モデルから,器官の形の共通性を生み出す発生機構を特定する方法論を解説する.

エクソソームの基礎と薬物送達への応用
中瀬 生彦

生体を構成する殆ど全ての細胞が分泌するエクソソームは,細胞間コミュニケーションに重要な役割を果たしている.エクソソームは,次世代の薬物送達キャリアーとしても高く期待され,臨床治験も含めた研究が盛んに進められている.本解説では,エクソソームの基礎から最新の薬物送達技術を紹介し,今後の展望を議論する.

総説

Min波の人工細胞内再構成とそこから見えた細胞サイズ空間効果
光山 隼史,義永 那津人,藤原 慶

バクテリアの細胞分裂面は,Min波と呼ばれる反応拡散共役に基づく波によって決定されている.我々は最近,人工細胞内でMin波を安定的に発生する条件を発見し,Min波の出現において細胞サイズの微小空間が制御因子として働くことを見出した.本総説では人工細胞内Min波の再構成過程とそこで得られた性質を中心に解説する.

微小管の破壊と修復:分子モーターによる微小管の新陳代謝
井上 大介

これまで,微小管のダイナミクスは,その末端でのみ生じると考えられてきたが,最近,格子中心部でも発生することが明らかとなってきた.本稿では,微小管格子内ダイナミクスに関する最近の研究について解説し,その中で,筆者らの生体分子モーターによる微小管格子内ダイナミクスの促進に関する研究について紹介する.

クライオ電子顕微鏡によるリボソーム機能制御メカニズムの可視化
横山 武司

リボソームはmRNA にコードされた遺伝情報を,アミノ酸の配列へと変換する暗号解読装置である.クライオ電子顕微鏡は,構造を次々と変化させながら機能するこの超分子複合体の構造解析において威力を発揮する.本稿では,クライオ電子顕微鏡によるリボソームの構造解析の概要と最新の成果をご紹介する.

Bacteroidia綱細菌の付着装置・V型線毛の形成機構
柴田 敏史

ヒトの口腔内,腸内細菌叢の主要構成細菌であるBacteroidia 綱細菌はヒトの健康に大きく関わっている.これらが持つ付着装置の線毛はピリンがリポタンパク質として菌体表面に輸送され,プロテアーゼ依存性のストランド交換反応によって根本から伸長するユニークな形成機構を持ったV型線毛である.

トピックス

脊椎動物胚におけるエネルギー代謝経路と発生シグナルの統合制御:Childモデルの再発見
荻沼 政之

最近我々は,脊椎動物胚でエネルギー代謝の代謝物が勾配を形成し,シグナル経路を直接制御することで胚のパターン形成を制御することを発見した.これは100年前に提唱された化学勾配モデルであるChildモデルの分子機構を実証した研究とも言える.本稿では我々の研究を紹介し,Childモデルの先見性を再確認し,今後の展望を議論したい.

NMRから見たアミロイドβペプチドの線維化機構解析
廣明秀一

アミロイドβ(Aβ)ペプチドに対する抗体医薬品アデュカヌマブ(米Biogen社,日本ではエーザイが発売予定)の認知症治療薬としての米国承認を受けて,アルツハイマー型認知症に関係するAβ多量体の分子病態に対する注目が高まりつつある.本稿では固体NMRと溶液NMRが明らかにしてきたAβ多量体の構造多型について紹介する.

TRPV1チャネルの開閉に伴うねじれ運動
藤村 章子,三尾 和弘,佐々木 裕次

カプサイシンによるTRPV1チャネルの開閉に伴う運動を,X線の回折現象を利用し,時間分解能100μm/frame でリアルタイム観察した.その結果,時計回りの回転運動バイアスが検出された.クライオ電顕構造解析のみでは得られなかった,ゲーティング機構の一端を垣間見ることができた.

アミノ酸側鎖と芳香族表面の親和性(アロマフィリシティ):実験による定性評価と分子動力学計算による定量評価
平野 篤,亀田 倫史

「アロマフィリシティ(芳香族親和性)」という新たな概念を提案する.本研究では,分子シミュレーションに基づき,20種類のアミノ酸のアロマフィリシティを指標化した.本指標は,従来の疎水性指標とは異なる傾向を示したが,実験結果と良く相関しており,タンパク質と芳香族化合物の相互作用の予測に役立つ.

オートファゴソーム形成の膜変形ダイナミクスの数理モデル
境 祐二

オートファゴソーム形成は隔離膜の大規模な形態変化を伴うオートファジーの主要プロセスであるが,その制御機構は謎のままであった.本稿では,最近の数理モデルによる解析をもとに,曲率因子による隔離膜の形態変化の制御機構について紹介し,オルガネラ形態研究における理論研究の有効性を議論する.

上皮組織を区画化する細胞接着性の違い
梅津 大輝

細胞の混ざり合いを防ぐ境界を維持することは多細胞生物の発生を安定的に進めるための普遍的戦略である.Steinberg博士が唱えた接着差異仮説は生体組織内の境界の維持メカニズムの有力な仮説としておよそ50年も前に唱えられていたが,実際の生体組織において成り立つことが最近になってようやく実証された.

トピックス(新進気鋭シリーズ)

植物の長距離・高速Ca2+シグナル
豊田 正嗣

神経や脳をもたない植物は,どのようにして傷つけられたことを感じて,その情報を全身に伝えるのだろうか.最新のイメージング技術によって解き明かされた植物の全身を流れる高速シグナルと,神経系とは異なる植物独自の傷害感知・情報伝達機構を紹介する.

理論/実験 技術

メゾスケールのタンパク質分子モデリングで分子人工筋肉を解析
上野 豊,松田 健人,加藤 薫,角五 彰,葛谷 明紀,小長谷 明彦

タンパク質複合体の動的な性質を理解するため,3次元グラフィックスソフトウェアを活用したモデリング手法を開発している.微小管で構成した人工筋肉の試料を共焦点顕微鏡で撮影した3次元像を解析し,微小管の円柱モデルのあてはめを試みた.得られた剛体モデルの物理演算を試行して動的な性質を考察した.

細胞の遊走方向をコントロールする足場の形
角南 寛

細胞は三次元的な足場のシャープなエッジ部分に沿って接着し伸展する性質を持つ.この性質を利用した,細胞を一方向へ遊走させる技術を紹介する.足場のシャープなエッジ部分の配置が,細胞を偏在させるほどの細胞遊走を引き起こすメカニズムの一端についても説明する.


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