脳・神経系
(2009/01/28)年会での様子を振り返りながら、日本生物物理学会の「脳・神経」分野について概観してみる。年会における「脳・神経」関連の発表は、例年おおむね20から30件くらいである。年会での発表件数が、毎年右上がりになっている本学会においては、他の分野と比べると、「脳・神経」が占める発表件数の比率は、以前に比べて多少下がっているかもしれない。
実際の研究内容を見てみると、細胞レベルでの反応、またはシグナルトランスダクションに関するものが多い。高次機能についての研究も多く進められており、学習記憶や認知などの研究もある。研究で取り扱われている実験動物は、ラット・マウス、サルなどの哺乳類に加えて、無脊椎動物である昆虫類(ショウジョウバエやミツバチ)、軟体動物のマキガイ類(アメフラシの仲間)、線虫、ミミズなど多岐にわたる。また最近では、ヒトを対象としている場合もある。実験手法は、電気生理と光学イメージングが大変多い。それ以外に、生化学、分子生物学、行動解析などもある。
国内外を問わず、他にももちろん「脳・神経」を研究している学会はある。それらとの比較をしてみよう。例えば、日本神経科学学会では、実験対象がラット・マウス、サルまたはヒトなどの哺乳類に特化していると思われる。一方、日本動物学会などでは、極めて多種多様な動物が並んでいる。それらをふまえると、日本生物物理学会の「脳・神経」研究では、程よく適材適所の実験対象が用いられており、結果として、どのような最新の技法でどのように神経生物学研究が現在発展しているのかを、カタログ的に勉強するのに丁度都合が良いといえる。
また、本学会の「脳・神経」の研究者には大きな特徴がある。これは日本生物物理学会全体の特徴のひとつかも知れないが、若い研究者は別として、ラボを率いているある程度の年齢の方々は、必ずしもご自身の学生時代の研究テーマは、「脳・神経」ではなかったと思われる。つまり、いろいろな分野から、「脳・神経」の魅力に引かれて「新規参入」された方が多いように見受けられる。しかしその分、研究内容はもちろんのこと、アイデアも新規性にあふれ、良い研究成果発表が目白押しである。
今後も、最新の解析技法を駆使しながら、「脳・神経」の分野は伸びて行くと思われる。さらなる展開のためには、工学系(ロボティクス)などへの発展も視野に入れるべきかもしれない。

神経細胞1個の単離

リアルタイムPCR法による記憶関連遺伝子のmRNA定量
徳島文理大学・香川薬学部 伊藤悦朗