『生物物理』誌はどこへいくのか
佐甲 靖志
微生物ロドプシンの多様性と可能性
須藤 雄気,小島 慧一
塩湖から見出された光受容タンパク質に端を発する『古細菌ロドプシン』は,21世紀における三つのブレイクスルーを経て,『微生物ロドプシン』へと変貌した.本稿では,これら経緯とその内容について解説するとともに,今後の展望「光をくすりに!?」について紹介する.
アポミオグロビンのフォールディング反応機構
西村 千秋
蛋白質は多くの場合,ほどけた状態から配列に依存した正しい折り畳みを完了し,機能する形となる.蛋白質の自発的な折り畳みは生物物理学的な手法で解析されてきた.今回の対象のアポミオグロビンは8本のへリックスからなる蛋白質であり,折り畳み中間体が複数報告され,その階層的なへリックス形成機構を中心に解説する.
リン脂質フリッパーゼを介するPIEZO1イオンチャネル制御と筋管形態調節
原 雄二,土谷 正樹,平野 航太郎,梅田 眞郷
筋芽細胞同士の融合を介した多核細胞(筋管)の形成は,筋線維の再生過程に必須である.筆者らは,脂質二重膜の外層から内層へリン脂質を輸送するリン脂質フリッパーゼが,Ca2+透過型イオンチャネルPIEZO1の活性化を正に制御することで,筋管の形態形成に関わることを明らかにしたので報告したい.
骨はどのようにして維持されるのか:相反する機能を持つ細胞による動的な制御機構
鎗 伸弥,菊田 順一,石井 優
二光子励起顕微鏡を用いて,動物個体が生きた状態で,骨組織内の破骨細胞と骨芽細胞が直接接触する瞬間を世界に先駆けて捉えることに成功した.さらに,この相互作用は骨リモデリングの制御に関わることが分かった.本技術は今後,様々な骨疾患の病態解明や新規薬効評価系の開発につながることが期待される.
運動能の系統樹―生命の系統樹における運動システム進化についての提案―
宮田 真人
これまで知られている全ての細胞運動能を,力発生ユニットの構造に基づいて分類した.運動能は,従来からよく知られている3種類のモータータンパク質や細菌べん毛のモーターなどを含む,18種類に分類された.さらに,ゲノム情報に基づいた新しい系統樹に照らし合わせることで,18種類の運動能の起源と進化を提案した.
アミロイドの代謝制御と構造多型
玉井 真悟,仲本 準,田中 元雅
プリオンなどのアミロイドの伝播機構の解明はアミロイド生物学を理解する上で重要である.本稿では,アミロイドの構造多型やシャペロンによるアミロイドの脱凝集について概説するとともに,酵母プリオンSup35のモノマー構造の揺らぎがアミロイド構造や細胞表現型に多型をもたらすことを見出した我々の研究成果を紹介する.
プロテオミクスによるミトコンドリアタンパク質複合体の解析
小柴 琢己
プロヒビチンはミトコンドリア内膜に局在し,多くのミトコンドリアタンパク質の足場として機能することで様々な生理機能を支えている.本稿では,新たな分子間相互作用のツールとして注目を集める,近位依存性ビオチン標識とプロテオミクスを組み合わせた手法による生細胞内でのプロヒビチン複合体の解析例を紹介する.
支部だより ~中国四国の生物物理研究~
岩楯 好昭,八木 俊樹,山田 和彦,奈良 敏文,田母神 淳,須藤 雄気
若手の会だより ~博士課程に進むにあたり~
高橋 大地