赤外・ラマン

「タンパク質の構造・機能研究および高感度分析
のための新しい分子分光法の開発」

■背景
生体物質の構造や機能の研究あるいは高感度分析には新しい分子分光法の開発研究が欠かせない。当研究室の目的は、新しい分子分光法(特に振動分光法)の開発(表面増強ラマン散乱(Surface-enhanced Raman Scattering; SERS)、チップ増強ラマン散乱(Tip-enhanced Raman Scattering; TERS)、ラマン光学活性(Raman Optical Activity; ROA)など)、独創的な装置開発(SERS―プラズモン共鳴測定システム、高感度ROA分光器)さらにはスペクトル解析法の開発(量子化学計算、ケモメトリックス、二次元相関分光法など)が必要となる。当研究室ではハード、ソフトすべてについて研究し、総合的な立場から「タンパク質の構造・機能研究および高感度分析のための新しい分子分光法の開発」を行っている。






インシュリンのROAスペクトル(実験および計算)とそれから導いた二次構造
S. Yamamoto. et. al., Anal. Chem. 2012, 84, 2440-2451




SERSの生命科学分野への応用


■研究概要
現在行っている研究は大きく分けてROA1)とSERS2-4)の二つに分けられる。1)ROA(図参照)分光法は分子の振動準位での光学活性を測定する分光法であり、キラルな分極率による信号を測定するため、通常の無偏光ラマン分光と比較して分子の立体構造により鋭敏である。また、速いラマン散乱現象に基づいているため、NMR分光法では信号が平均化されてしまうような、マイクロ秒以下の構造平衡にある分子の構造解析が可能である。2)SERSを用いると単分子のラマンスペクトル測定も可能となる。したがってSERSは最近生体物質の高感度分析法として非常に注目されている。図にあるようにSERSはDNA検出、イムノアッセイ、さらには病気の診断に応用される可能性がある。当研究室では最近、Avidinで誘起したSERS基板を用いたラベルフリー間接イムノアッセイ法を提案した。4)

■社会的意義
溶液中タンパク質構造に鋭敏でROA分光法を用いることで、既存の方法では分析できなかった、アルツハイマー病などの病気に深く関係するタンパク質アミロイド繊維や天然不定形タンパク質の詳細な分子構造とその変性メカニズムを初めて明らかにできる。
SERS法は生体物質の高感度分析法として極めて有望である。イムノアッセイや病気の診断にも使える可能性がある。さらにはSERSに基づくバイオセンサーも広く研究されている。

■参考文献
1) Yamamoto, S., Anal. Bioanal. Chem., 403, 2203, (2012).
2) Han, X., Zhao, B and Ozaki, Y., Anal. Bioanal. Chem., 394, 1719, (2009).
3) Han, X., Zhao, B and Ozaki, Y., Trends Anal. Chem., 38, 67, (2012).
4) Han, X., Chen, L., Ji, W., Xie, Y., Zhao, B., and Ozaki, Y., Small, 7, 316 (2012).

■良く使用する材料・機器
1)各種ラマン分光器(当研究室で開発したものおよび市販品)
顕微ラマン分光器、近接場ラマン-AFMシステム、表面増強ラマンープラズモン共鳴測定システム、ラマン光学活性分光器
2)FT-IR
3)各種近赤外分光器(当研究室で開発したものおよび市販品)
FT-NIR, 近赤外イメージングシステム、FT-NIR/IR, 可搬型近赤外イメージング装置


H24年度分野別専門委員
関西学院大学・理工学部
尾崎幸洋 (おざきゆきひろ)
http://science.kwansei.ac.jp/~ozaki/index.html