NMR(固体)

「固体NMRを用いて機能性生体分子の構造と機能を探る」

■背景
機能性生体分子の中でも細胞膜に埋め込まれたペプチドや膜タンパク質は信号伝達、イオン透過、物質輸送を制御して生命活動の維持に重要な役割を果たしています。本研究では、技術の発展の目覚しい固体高分解能核磁気共鳴分光法の手法を用いて、細胞膜結合生体分子の構造と機能の相関を分子論的に明らかにすることを目的にしています。

■研究概要
本研究では固体NMRの測定対象となる機能性生体分子を化学合成、生化学的手法で調製し、この試料を用いて固体高分解能NMRスペクトルンを測定し、分子構造と機能の相関を原子分解能で明らかにしています。次に具体的な研究例を述べます。1)強く膜に作用して菌の生育を妨げる抗菌ペプチドや毒物の抗菌作用を生体防御の視点から研究しています。(文献1、図1)2)光駆動型プロトン輸送活性をもつ高度好塩菌由来の膜タンパク質バクテリオロドプシンのプロトン輸送機構を解明する研究を行っています。(文献2)3)光受容膜タンパク質センサリーロドプシンの光応答と光信号伝達の分子機構を解明する研究を行っています。(文献3、図2)4)アルツハイマー病などアミロイド線維が神経細胞に沈着することで発病に関与するアミロイド線維およびそのオリゴマーの形成機構と阻害機構を解明する研究行っています。(文献4)5)固体NMR分光法の装置開発研究を行っています。研究室では現在光照射が可能なNMR測定システムとNMRプローブ内でマイクロ波照射が可能なNMR測定システムの開発(図3)を行っています。

■科学的・社会的意義
本研究は、抗菌物質の構造解明から生体防御の仕組みの理解につながり、創薬開発に寄与する成果が期待されます。またアミロイド線維形成や阻害の解明は医療工学の発展に寄与することが期待されます。

■参考文献
1)A. Tsutsumi, N. Javkhlantugs, A. Kira, M. Umeyama, I. Kawamura, K. Nisjhimura, K. Ueda, and A. Naito, (2012), “Structure and orientation of bovine lactoferrampin in the mimetic bacterial membrane as revealed by solid-state NMR and molecular dynamics simulation.” Biopjys. J. 103, 1735-1743.
2)I. Kawamura, N. Kihara, M. Ohmine, K. Nishimura, S. Tuzi, H. Saito, and A. Naito, (2007), “Solid-state NMR studies of two backbone conformations at Tyr185 as a function of retinal configuration in the dark, light, and pressure adapted bacteriorhodopsin.” J. Am. Chem. Soc., 129, 1016-1019.
3)Y. Tomonaga, T. Hidaka, I. Kawamura, T. Nishio, K. Ohsawa, A. Wada, Y. Sudo, N. Kamo, A. Ramamoorthy, and A. Naito, (2011), “Anactive photoreceptor intermediate revealed by in situ photoirradiated solid-state NMR spectroscopy.” Biophys. J., 101, L50-L52.
4)R. Hung, S. Vivekanandan, J.R. Brender, Y. Abe, A. Naito, and A. Ramamoorthy, (2012), “NMRcharacterization of monomeric and oligomeric conformation of human calcitonin and its interaction with EGCG.” J. Mol. Biol., 416, 108-120.

■良く使用する材料・機器
1) 固体NMR分光器 CMX 400 Infinity (Chemgnetics)
2) ペプチド合成機 ABI431A (Applied Biosystems)
3) 実験試薬 (和光純薬株式会社


図1 固体NMRにより決定された抗菌ペプチドラクトフェランピンの膜結合構造。



図2 光照射固体NMRによる光受容膜タンパク質の光誘起構造変化の観測。



図3 マイクロ波照射固体NMR分光器の開発。


H24・25年度分野別専門委員
横浜国立大学大学院工学研究院・機能の創生部門
内藤 晶 (ないとうあきら)
http://www.chem.ynu.ac.jp/lab/naitolab/