一般社団法人 日本生物物理学会(生物物理について)

遺伝子発現

「ゲノムから時空間性が現れてくる不思議な仕組み」

■背景 遺伝情報は、4種類の塩基の並び方の情報として親から子供に安定に受け継がれます。この安定な情報の「運び屋」から、どうやって生命のダイナミクスが生まれてくるのでしょうか?その謎は、遺伝子発現のダイナミクスの中にあります。

■研究概要 DNAに書き込まれた遺伝情報は、タンパク質の一次構造として読み取られる前に転写されてmRNAになります。このプロセスが遺伝子発現です。このプロセスがどのように時空間的にコントロールされているかが、生命のダイナミクスを理解するための最も基本的な問題です。この問題に挑戦するためには、網羅的にmRNAの構造と量を計測し、その動的挙動を定量的に記載するのが第一歩です。その定量データから、遺伝子発現が遺伝子間でどのようにコントロールされているかのネットワークの解析を行っていきます。更に、それらを1細胞レベルで見た時、どのような揺らぎがそこに見られ、生物がそれをどのように処理しているかを調べています。

■科学的・社会的意義 本研究は、生物のダイナミクスの基本原理を明らかにするものです。1細胞レベルでの遺伝子発現の持つ意味は、まだまだ未解明の問題ですが、疾患発症プロセスや創薬発見のためにも必須の情報を与える解析です。ゲノム構造解読が容易になってきた現代であるからこそ、社会的にも新しい技術開発と生命の基本ルールの解明が求められています。

■参考文献 1) Shirasaki, Y., Yamagishi, M., Shimura, N. , Hijikata, A., Ohara O. Towards an understanding of immune cell sociology: Real-time monitoring of cytokine secretion at the single-cell level. IUBM Life 2012 in press.

2) Ohara O. From transcriptome analysis to immunogenomics: current status and future direction. FEBS Lett. 2009 583(11):1662-7.

■良く使用する材料・機器 1)質量分析装置
2)リアルタイムPCR
3)次世代シーケンサー
4)蛍光顕微鏡

H24年度分野別専門委員
かずさDNA研究所 ヒトゲノム研究部
小原 收 (おはらおさむ)
https://www.nagaokaut.ac.jp/j/annai/NUT-toprun/ohnuma0.html