細胞内情報伝達・変換

「シグナルを受容した細胞が応答する仕組みを探る」

■背景
細胞は、外界の様々なシグナルに対して応答します。細胞がシグナルを受容した後、その情報が細胞内部で処理され、細胞の応答を引き起こす仕組みを細胞内情報伝達機構、または細胞内情報変換機構といいます。これまでに、さまざまな種類の細胞内情報伝達の仕組みが明らかになっています。細胞は、その細胞の持つ仕組みによって、ホルモンや神経伝達物質などの生理活性物質のほか、光・温度変化などの物理的刺激もシグナルとして受容し、これに対して応答することができます。



図1(a):コイ網膜から採取した錐体・桿体と、その模式図。OS:外節、IS:内節、N:核、T:シナプス末端。(b)様々な強度のフラッシュ光を照射した時のコイ桿体、錐体の応答。図中の矢印は、フラッシュ光を照射した時間を示す。錐体の応答は桿体より短い。 (c)桿体、錐体に照射したフラッシュ光強度と、それに対する応答の大きさの関係。桿体(●)、緑感受性錐体(△)、赤感受性錐体(▼)について測定した結果を示す。桿体のほうが弱い光に対して応答できる(感度が高い)ことがわかる(文献2,図1、図2より改変)。




図2:脊椎動物の桿体視細胞の光応答を司る細胞内情報伝達機構。矢印で示した複数の酵素反応から成り立っている。応答の発生に関わる反応を黒矢印で、応答の終息に関わる反応を破線の矢印で示す。錐体にも同様の機構がある。


■研究概要
私達は、脊椎動物の網膜に存在する2種類の視細胞が光に対して応答する仕組みに着目して研究を行なっています。2種類の視細胞とは、明るいところでものを見る際に働く錐体と、暗いところで働く桿体です(図1)。どちらの細胞も、同様の細胞内情報伝達機構で光に対して電気的な応答をするのですが(図2)、応答の持続時間や感度に違いが見られます(図1)。仕組みが似ているにもかかわらず異なる応答をする2種類の細胞を比較することにより、応答の違いが生じる原因を詳細に検討することが可能です(文献1、2)。

■科学的・社会的意義
本研究は、細胞の応答の仕方が、どのような要素によってコントロールされているのかを解明する上で役立つと考えられます。また、細胞に特定の応答をさせるための薬の開発などにも応用できる可能性があります。

■参考文献
1) Kawamura, S., Tachibanaki, S. (2012) “Explaining the functional differences of rods versus cones” WIREs Membr. Transp. Signal 1: 675-683
2) 橘木 修志、河村 悟 (2008) “昼間視の分子メカニズム” 生物物理 48(2): 102-107

■良く使用する材料・機器
1)魚類の視細胞
2)実験試薬(和光純薬株式会社
3)倒立顕微鏡(オリンパス


H24年度分野別専門委員
大阪大学・生命機能研究科
橘木修志 (たちばなきしゅうじ)
http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/~kawamura/index2.htm