タンパク質間相互作用

「生命ネットワークの基本部品の構造を解明する」

■背景
生物の基本構成要素であるタンパク質の多くは、単独で働くのではなく、他のタンパク質と協同して働くことが知られています。その仕組みの解明は、生物物理学のみならず生物学全般の基本問題の一つですが、特にタンパク質同士がどのように結合する(相互作用する)かの理解に向けては、幾つかの問いを立てることができます。

1. 注目しているタンパク質が、他のどのタンパク質と相互作用するのか。
2. あるタンパク質のどの部分が、他のタンパク質との相互作用に寄与するのか。
3. 2つのタンパク質が相互作用して、どのような3次元構造をとるのか。

■研究概要
上記1番目の問いについては、特定のタンパク質に目印をつけて同時に観察されるタンパク質の種類を同定するなど各種の実験的な方法で、タンパク質AとBが相互作用するという知見を得ることができます。このような相互作用タンパク質ペアのリストは、公共データベースにも蓄積されてきており、その情報を用いると、相互作用する一群のタンパク質をネットワークとして表現することができます(図1)。また、このような既知の相互作用ネットワーク情報を用いることで、与えられた2つのタンパク質が相互作用するかどうかを計算で予測するアルゴリズムも提案されています(文献1)。

上記の2番目と3番目の問いについては、結合している2つのタンパク質を結晶化し、X線結晶構造解析法によって3次元構造を調べるのが、もっとも強力なアプローチになります。このように解析されたタンパク質複合体の立体構造についても、公共データベースに情報が蓄積されてきていますが、まだまだ限られた数のタンパク質についてしか、相互作用の詳細が解明されていません。そこで、タンパク質のアミノ酸配列のみから、どの部位(何番目と何番目のアミノ酸残基かなど)が他のタンパク質との相互作用に関わっているかを予測する方法が提案されています(文献2)。この方法を使って、乳がん細胞中の特定のタンパク質で、がん細胞の増殖に密接に関わる部位を予測し、その結合を阻害する分子を設計することで細胞増殖を抑えることに成功しました(図2、文献3)。



図1 タンパク質間相互作用ネットワークの例



図2 乳がん細胞の増殖に関わるタンパク質の結合部位の予測と結合阻害分子設計による細胞増殖の抑制

■科学的・社会的意義
タンパク質間相互作用の研究は、生命現象の分子レベルでの解明の基礎となるだけでなく、新規の医薬品開発においても、現在の重要な研究領域として多くの注目を集めています。

■参考文献
1)Murakami Y, Mizuguchi K. Homology-based prediction of interactions between proteins using Averaged One-Dependence Estimators. BMC Bioinformatics 15:213 (2014).
2)Murakami Y, Mizuguchi K. Applying the Naive Bayes classifier with kernel density estimation to the prediction of protein-protein interaction sites. Bioinformatics 26:1841-8 (2010).
3)Yoshimaru T, et al. Targeting BIG3-PHB2 interaction to overcome tamoxifen resistance in breast cancer cells. Nat Commun 4:2443 (2013).


H27年度分野別専門委員
医薬基盤・健康・栄養研究所
水口賢司 (みずぐちけんじ)
http://mizuguchilab.org