核酸構造

「RNAの構造と働き」

■背景
核酸には、DNAとRNAがあり、塩基と糖とリン酸が結合したヌクレオチドを構成成分としています。DNAの場合は、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という4種類の塩基とデオキシリボースという糖により、RNAの場合は、A、G、Cとウラシル(U)という4種類の塩基とリボースという糖により構成されています。ワトソンとクリックらによって明らかになったDNAの二重らせん構造(図1B)は有名ですが、RNAもDNAと同様に二重らせん構造(図1A)も形成します。
 様々な生物のゲノムが解読されると、多くの機能性RNA(Non-coding RNAという)が見つかってきています。RNAは、二重らせん構造だけではなく、様々な立体構造を形成して、様々な働きをしていることが明らかになっています。生命現象において、RNAが重要な役割を担っているのです。また、進化分子工学の手法を用いて、標的とする物質に強く結合するような人工のRNA(アプタマーという)を作製することも可能になっています。



図1 核酸の構造
RNAのA型二重らせん構造(A)、DNAのB型二重らせん構造、RNAアプタマーの立体構造(C)(PDB ID: 2RRC)。RNAの二重らせん構造の主溝は、DNAのものより狭く、タンパク質は主溝に結合できません。RNAアプタマーには、非ワトソン・クリック型の塩基対があるため、らせん構造に歪みが生じて主溝が広がり、タンパク質が結合できるようになっています。



図2 抗体に結合するRNAアプタマーの立体構造(PDB ID: 3AGV)
医薬品となる抗体が開発されていますが、このRNAアプタマーは、抗体を特異的に認識して強く結合するので、抗体医薬品の分離精製のために使うことができます。

■研究概要
様々な働きを担うRNAの立体構造を明らかにすることによって、RNAがどのようなメカニズムで働いているか明らかにすることができます。例えば、図1CのRNAアプタマーは、急性骨髄性白血病の治療のために作られましたが、病気の原因となっているDNA結合タンパク質に、DNAの構造を擬態して結合していることが明らかになりました。図2のRNAアプタマーは、抗体に結合しますが、抗体の分子表面に形を合わせることによって、非常に強く結合することがわかりました。

■科学的・社会的意義
本研究では、RNAがどのような立体構造でどのように働くのかを解明することにより、生命現象におけるRNAの働きを原子のレベルで物理化学的に明らかにします。RNAアプタマーは、次世代型の医薬品として期待されているので、RNA医薬品の開発にも貢献します。

■参考文献
1)Nomura, Y., et al. (2010). “Conformational plasticity of RNA for target recognition as revealed by the 2.15 Å crystal structure of a human IgG-aptamer complex.” Nucleic Acids Res. 38(21): 7822-7829.
2)Nomura, Y., et al. (2013). “Solution structure of a DNA mimicking motif of an RNA aptamer against transcription factor AML1 Runt domain.” J. Biochem. 154(6): 513-519.

■良く使用する材料・機器
1) 核磁気共鳴分光計 (ブルカー・バイオスピン株式会社)
2) 安定同位体標識試薬 (大陽日酸株式会社


H27年度分野別専門委員
千葉工業大学・工学部
坂本泰一 (さかもとたいいち)
http://www.le.it-chiba.ac.jp/sakamoto/index.html