脂質膜・生体膜

「膜を自在に操り、人工細胞を設計する」

■背景
細胞は、脂質分子が集合して出来たナノメートルの薄い膜(脂質膜)により覆われています。細胞は膜を変形させることで外部の物質を包み込んで吸収し、内部でつくられたタンパク質などを外に排出します。このような膜の動きを支配する物理法則とはどのようなものでしょうか?

■研究概要
この疑問に答えるため、生体細胞膜と同じ構造を持つ人工膜小胞(リポソーム)を用いて、細胞の膜の動きを再現する実験を行っています。光により形状が変化する人工分子をリポソームに加え、膜の孔の開閉を光刺激により制御しました(文献1)。これは、細胞内での物質輸送プロセス「オートファジー」機能を人工的に再現したものです。また、ナノ粒子がリポソームの表面に吸着する様子を観察すると、粒子の大きさによって膜に吸着する領域が異なることを発見しています(文献2)。これは、ナノ物質が細胞内に吸収される初期プロセスを再現したものです。測定データを解析し膜が変形するときのエネルギーを計算することで、これらの実験結果を数式で説明することができます。

■科学的・社会的意義
本研究は、膜の動きを支配する物理法則の解明に役立つと共に、体内で細胞の代わりに働く人工細胞の設計に繋がります。また、様々な物質の細胞膜表面への作用メカニズムを説き明かすことも可能となり、医薬品の作用やナノ物質の安全性を評価する研究への応用が期待されます。

■参考文献
1)T. Hamada, et al. (2010). “Membrane disc and sphere: controllable mesoscopic structures for the capture and release of a targeted object.” J. Am. Chem. Soc. 132: 10528-10532.
2)T. Hamada, et al. (2012). “Size-dependent partitioning of nano/micro-particles mediated by membrane lateral heterogeneity.” J. Am. Chem. Soc. 134: 13990-13996.

■良く使用する材料・機器
1) 位相差・蛍光顕微鏡システム(オリンパス株式会社株式会社ニコンインステック


H27年度分野別専門委員
北陸先端科学技術大学院大学・マテリアルサイエンス研究科
濵田勉 (はまだつとむ)
http://www.jaist.ac.jp/ms/labs/hamada